ファンシーラットがファンシーラットになるまで

ファンシーラットがファンシーラットになるまで

ファンシーラットは、平たく言えば、「ドブネズミ」です。
しかし、野生に生息しているドブネズミと違うのは、長い年月をかけ人間が飼いならす事によって、生理学的また心理学的に異なっているという点です。

ファンシーラットの起源は18世紀ヨーロッパ。
ラットキャッチャーと呼ばれるラット専門の害獣駆除業者がきっかけを作りました。
ラットが病気を媒介する事を防ぐため、また食料の食い荒らしを防ぐためにラットキャッチャーはヨーロッパ全土のラットをどんどん捕獲していったのですが、その捕まえたラットをただ処分するだけではなく、見世物として再利用しようと考えた人がいたのです。

それが「Rat-baiting(ラット攻め)」と呼ばれる残酷なゲームの始まりです。

Rat-baiting(ラット攻め)

捕獲した複数のラットを囲いの中へ入れ、犬(通常はテリア)を放ち、どれくらいの時間でどれくらいのラットを狩れるかを競うギャンブルゲームです。

似たようなもので言えば、「Bull-baiting(牛攻め)」なんかがありましたが、1835年にイギリスでは動物虐待法が施行され、雄牛や熊などの大型動物のbaiting(攻め)が禁止されます。
しかし、ラットのような小型動物にはその法律は適用されず、御鉢が回ってきたという訳です。

当時、バーなどではかなり人気のゲームだったらしく、お札を握り締めてRat-baiting(ラット攻め)に群がる大勢の人々の様子が残されています。
残酷な内容ですが、これが「ファンシーラット」を誕生させます。

“奇妙な”色のラットの出現

Rat-baiting(ラット攻め)が白熱していく中でラットキャッチャーやRat-baitingの愛好者が通常のアグーチではない”奇妙な”色のラットを発見し、次々にペットとしての販売を始めます。

主に現在のファンシーラットの基盤を築いたと言われているのは二人。
ビクトリア女王のラットキャッチャー、ジャック・ブラックとロンドン最大の遊猟パブのマネージャーのジミー・ショーと言われています。
ブラックはより美しい”奇妙な”色のラットをリボンで飾ってペットとして販売すると有名だったそうです。

もしかしたら、あなたの家のラットちゃんはバッキンガム宮殿を走り回っていた子の子孫かもしれませんよ!

いよいよファンシーラットが誕生する

「ファンシーラット」が公式の物となったのは、1901年10月24日。
メアリー・ダグラスという女性がイギリスのアリスバーリーという街のショーでマウスのコンテストに自身のペットのラットを連れて来る許可を取ったのが始まりでした。
この時、公認の趣味として「ファンシーラット」が誕生します。

その時のコンテストで彼女のブラックフーディットラットは優勝し、地域一帯でブームを引き起こしたと言われています。

そもそも”ファンシー”ラットってどういう意味?

英語で書くと「fancy rat」
“fancy”とはパステルカラーなイメージの「空想、幻想」なんて意味ではなくて、正しくは「〈ペットなど〉変わり種の,珍種の」という意味です。
一般的なアグーチのドブネズミと対比して、でしょうね。

ペットとしてのラットは”fancy rat”という呼び名のほかに、”pet rat” “ratty(複数形はratties)”なんてものがありますが、日本では一般的ではありません。


「ペット」としての品種は概ね人間と長い間関わる事で誕生します。
「ファンシーラット」が人間と関わってきたのは分かる範囲でおよそ三世紀。
なるほど、人間に慣れたベタベタねずみが生まれるのも納得の長さです。

日本で「ファンシーラット」は一般的なペットではありませんが、上記の通りイギリスおよびアメリカなどの海外ではごくありふれたペットです。
ラット専用フードやラット専用グッズ、ラット用のケージなどファンシーラットを主とした商品も非常に多く、飼い主たちは好みのものを選択することが出来ます。

海外には様々なラットのファンクラブや学会などもありますが、アメリカにはAFRMAと呼ばれる非営利の国際クラブもあります。
名前は”American Fancy Rat and Mouse Association(アメリカンファンシーラットアンドマウス協会)”の略であり、ファンシーラットの団体は「マウス」と合同のものとなっている場合がしばしばあります。
それは「マウスのコンテストにファンシーラットが参加した」という歴史から考えると何ら違和感のない流れだったりもするのです。

これらはファンシーラットの飼育には直接関係の無いことではありますが、こういう豆知識を知っておくとよりファンシーラットの飼育が面白くなるのではないでしょうか?

(参考)
Fancy rat-Wikipedia
History of the Norway Rat (Rattus norvegicus)-Rat Behavior and Biology