新入りラットの紹介のセオリー<多頭飼い導入>

まず、これから紹介する方法は海外で広く紹介されている内容であり、主に私の経験則ではないということを断っておきます。
私の元には時折さまざまなラットに関する相談が寄せられますが、多頭飼いに関する相談も多く、中には最悪のパターンになってしまったけれどなぜ?というものもあります。
ラットも生き物ですから、性格や好みの違いがあります。なので、「これが正解だ!!」という万能な回答はないかもしれませんが、おおよそのラットに対して良い反応のあるセオリーというものは存在します。
多頭飼いにトラブルや事故は付き物ですが、一度 古参のラットが受け入れさえすれば大きな故意のトラブルは避けられるはずです。
多くの人がセオリーを周知し、多頭導入トラブルが少しでも減る事を祈ります。

やらない方が賢明なこと

まず、詳しい説明をする前に「やらない方が賢明なこと」をあげておきます。

  • 性成熟済み(生後三ヶ月以上)のラット(以下、大人ラットとする)のケージにいきなり新人を入れる。

生後6週齢以前のラットを大人ラットと一緒にすると殺されるという実例があり、また新しい大人のオスラットを導入することは最も難しいと言われるほど。(ちなみにもっとチビだと食べられる可能性すらある。)
オスラットの多頭導入は簡単にはいかないと思っていたほうが何かと良いだろう。
※私が相談を受けた中で、このパターンで死亡事例有り。多分、一番人間が救出し難く危険。

  • ケンカが起こった時の対策をせずに会わせる。

ラットのケンカはいきなり始まってすぐエスカレートする可能性があります。止める時に対策をしておかないと、主に人間が危険。
ラットの噛み傷は腫れ難いような気もしますが、噛まれたら必ず傷口をしっかり絞って血を出しましょう。雑菌の混入を防ぎ、治りを早くします。

  • 多頭が失敗したときの対策をせずに新入りを迎える。

特に古参が大人ラットの場合には万が一を考えてサブケージを用意しておくことをオススメします。まあ、ちょっと大きいキャリーでも買う気持ちで。もし多頭がすんなり上手くいっても何かしら使い道はありますよ!

多頭導入のプロセス

新しいラットを受け入れるためにかかる時間はそのラットによりけりです。一瞬で仲良くなってしまう子達もいれば、一緒に暮らせるまでに何ヶ月も何ヶ月もかかってしまう子達もいます。それは年齢によっても変わってくるとは思いますが、私はそのラットの性格とこれまでの鼠生の経験が大きく関わっているのではと感じています。
どうも、すでに多頭飼いしている子達・親子関係にある子達などは割とすんなり新人を受け入れているようにも感じます。しかし、だからといって多頭飼いが成功するまでは油断は大敵でしょう。

<多頭導入時に用意するもの>

  • バニラエッセンス(もしくはココナッツオイル、ラットに無害なジュース、マグロ缶 など空けただけで匂いが漂うようなの香りの強い食べ物)

古参ラットと新参ラットの匂いを同じにすることで敵対心を削ぐ。

  • (お風呂セット)

お互いの匂いのリセット。(深刻でない場合、なくても可。)

  • 水道水を入れたスプレー(もしくは皮手袋)

ケンカが勃発した際、水スプレーを噴射することで攻撃が止まる。(※白熱した喧嘩は止まりません。)
水圧は害をあたえない程度に強い方がよりびっくりして止まる。

<多頭導入を行う場所>

  • どちらの縄張りでもない中立領域

どちらかの縄張りで新人を紹介する場合、古参が自身の縄張りを荒らされたとして攻撃態勢に入る可能性があります。なので、新人の紹介はどちらの縄張りでもない「中立領域」で行う必要があります。
望ましくは、匂いを洗い流せるお風呂や普段散歩させないキッチンやテーブルの上、ベッドの上やリビングなど。とにかく、古参ラットがあまりマーキングをしていないような(もしくはマーキングを完全にリセットできる)場所で行って下さい。

<導入プロセス>

1.新しいラットを迎えたらいきなり古参ラットに会わせるのではなく、まず健康診断へ行くか2-3週間の検疫をしましょう。
何も異常がないと分かるまでは同じ空気を吸わせないように、(出来れば)部屋も分けた方がいいでしょう。
よっぽど悪質な環境で飼われていない限り寄生虫や深刻な感染症などは持っていないでしょうが、万が一もありえます。
ダニなんかは人間の目では見えないものもあります。病院では検便と皮毛検査を受けたほうが良いでしょう。
腸内の寄生虫なんかは便に出てくる時と出てこない時の周期はあるものもあるようなので、一度検便をクリアしてもしばらく経過を見たほうが良いでしょう。

ちなみに、他のラットに感染するウイルス性の病気はキラムラットウイルス(KRV)・ラットコロナウイルス(SDA)・センダイウイルス(SV)などがあり、いずれも人間にはさほど影響はありません。(ラットの免疫にダメージを与えるウイルスが多い。空気感染あり。)
ラットで病気といえば「ペスト」が有名かと思いますが、ペストはノミ由来などで広まるげっ歯類全般が保菌する可能性のある病気であり、ラットのみが保菌するような病気ではありません。そして、人間の飼育下かつ日本ではまず保菌する可能性はありません。プレリードッグなどのげっ歯類の輸入が制限されたのはこれらに関連があります。

2.互いの香りを緩和する。
ラットの個別の匂いを薄めることで導入が簡単になります。一番有名な方法はバニラエッセンスをラットに擦り付ける、という方法ですが、これはバニラエッセンスに限ったことではなくココナッツオイルやジュースなど香りが強くてラットが好意的に感じるものであれば良いようです。※ジュースを擦り付ける場合は毛の表面に留め、内部(皮膚)まで浸透しないようにしたほうが良いでしょう。下手すればかぶれるかも。
古参の新参ラットの匂いに対する拒否感が強い場合はお風呂で洗ってから好意的な匂いをこすり付けることによって、より香りを緩和させることが出来ます。

3.中間領域で対面させる。
時間はラットが眠くなるような時間が最適です。飼い主の行動パターンに影響されていると思いますので、任意で普段ラットが寝ているもしくは眠くなるような時間に開始してください。
普段の散歩部屋などは縄張りが完成している可能性が高いので避けた方が良いでしょう。どうしても散歩部屋などで対面させる必要がある場合は床や家具などを無害な消臭剤などでよく拭き、マーキングをリセットしましょう。

まず、新参ラットを入れ次に古参ラットを入れましょう。お風呂で香りの緩和のついでに新参ラットの紹介を行う場合はまず新参ラットから洗ってください。特に初回はいつでも何が起きても対処できるように目を離してはいけません。このとき、水スプレーや皮手袋を用意しておきましょう。水スプレーはトラブルが起こった時に攻撃側に噴射することで攻撃の手を止めることが出来ます。(100%効くかは不明。)お風呂の場合はそのままお湯をバシャっとかけましょう。


「何がケンカで何がケンカごっこなのか?」
これは経験がないと全てケンカに見えてしまうかもしれませんが、ラットはヒエラルキーの決定や単純にじゃれ合いとして“ケンカごっこ”をします。
相手をひっくり返したり横倒しにし、マウントを取ったほうが勝ち。負けて下になった方は降参の意で情けなく「チュー」と鳴きます。そのまま勝った方が毛づくろいをし始めて、負けたほうが「あああー…」となっている事も多々あります。

ケンカとケンカごっこの見極めですが、「歯が出るか出ないか」ではないでしょうか?
ケンカごっこではまず”歯”は出ません。主に攻撃はパンチかキックか のしかかりです。“噛む”ようなそぶりを少しでも出すようなら本気である可能性が高く、危険ですので一旦中断したほうが良いでしょう。
また、多くの引っかき傷が出来てしまうなど多くの傷を負っている時も同じく”本気の暴力”ですので中断してください。

ごっこではなく、本気の暴力が相手に向かった際は只ならぬ悲鳴を上げますので、分かりやすいとは思います。

本気の喧嘩になる予兆として分かりやすいのは、背を曲げながらフシュフシュ言い始めたらそれはもうかなり危険です!
殴りあったり蹴り合ったりというのはじゃれ合いでもよくある事ですが、「フシュフシュ」という警戒音、これは普通の状態では絶対に発しない音です。
その状態で飼い主が触っただけでも飼い主に激情して噛まれる危険性もあります。いや、むしろ触らなくても八つ当たりしに飼い主へ向かってくる可能性もあります。それがどんなに普段デレデレの子でもです。
もうそうなってしまったらプラケなどで「フシュフシュ」言っているラットを捕獲して、とりあえずケージにお帰りになってもらってください。


対面させて30分ほど何も無かった場合、同居が可能な合図です。
同居の際にはケージを一掃してなるべく匂いを取り、バニラエッセンスなど香りの飽和に使ったものをケージ内にも擦りつけましょう。引っかき傷を予防するために、お互いの爪は切っておいたほうが良いでしょう。

基本的には「新参ラットから」が一般的なセオリーですが、古参よりも新参ラットが年上な場合であればちょっと手順が変わります。
基本的には「若い方が先」と覚えておきましょう。

4.一度で上手くいかなかった場合
若いラット同士であれば一度で一瞬で仲良くなってしまうことも多々あるでしょう。
現に私の場合は多頭導入時はあまり褒められた方法ではなかったにせよ、会った瞬間から奏くんが圭くんにベタ惚れだったために一瞬で仲良くなっていました。その後一ヶ月ほどベタ惚れすぎて奏くんは圭くんの金魚のフンと成り果てます。(同時にマウントも取られ尻にしかれる。0距離過ぎてキレられるというトラブルも起きる。)

しかし、すぐには上手くいかないパターン・そもそも傾向として同居の難易度が高いパターンというものがあります。
特に難しいとされるのはオスの大人 対 大人の場合。どうにも傾向としてオスの大人ラット同士は縄張り争いが勃発しやすく、上記のような正しいとされるセオリーパターンを踏んでもすんなり行かない場合も多いようです。
そんな場合はいきなり同居を目指すのではなく、ケージと隣合わせでそれぞれ個別で飼い、徐々に拒否感を緩和させるという方法があります。また、同時併用できる緩和方法として、「匂いの交換」があります。

「一度面会に失敗した場合、隣合わせに別々で飼いお互いの存在に慣らす」
イメージとしては、個々として認識している別々の縄張りが互いに時間をかけて溶け合っていくような感じでしょうか。
隣り合わせてケージを置くことで互いに匂いが交わります。最初はお互い、特に拒否反応を起こした方のストレスになるでしょうけれど、ラットは順応性の高い動物です。ケージが隣接していること自体には比較的すぐ慣れるでしょう。

注意しなくてはならないのは、ケージからお互い手や尻尾などが届く距離まで隣接させないということでしょうか。
意外とラットの手は伸びます。概ね普段見えているのは人間で言う肘から下までなので、頑張って伸ばせば二倍ほど伸びます。個体差があるので何とも言えませんが、少なくとも10cmほどは間隔を空けたほうが良いでしょう。

「匂いの交換」
これも上記と同じ、縄張りを溶け合わせる行為です。
ハンモックやブランケット・床敷きなどを定期的にお互い交換しましょう。二人の物を一緒に洗濯しちゃう、なんてのも良いかも知れません。

“ラットは何回も顔を合わせるたびに仲良くなる。”という傾向があります。なので、一回失敗したとしても何度もトライすることで将来的に同居可能となる可能性があります。
それを実現するのには飼い主の忍耐と努力が必要となります。
また、何度も何度もトライしてもどうしてもトラブルが起きてしまう場合、「多頭飼いは無理」と選択することも出来ます。実際、相性が悪く無理な子もいるでしょう。人間関係と一緒ですね。
目安としては数週間以上とザックリした説明がありますが、「半年かかって成功した」なんて報告もありますので何とも言えず個々の判断で決行・中断は決めて良いと思います。

また、生後三ヶ月未満の子供ラットと大人のラットは摂取目標タンパク質量の違いから本格的な同居は難しいと捉えた方が良いでしょう。子供用のご飯を大人に上げ続ければあっという間に肥満でしょうし、大人用のご飯を子供に上げ続ければ発育が上手く行かず大人になってから疾患が出てくる可能性が高いでしょう。

多頭導入に使えるラットの仕草と意味の簡易リスト

  • 背中を丸め、毛を逆立て、シューと言い、他のラットを横から押し倒す。

攻撃的になっている。興奮している。(ただ押し倒すだけではじゃれ合い。)
この全ての仕草が見られる場合、非常に危険なのですぐに中止する。

  • 鳴きながら後ろ足で立つ。

怖い。

 

(参考)
Rat Care Guide-Introducing Rats
The Rat Fan Club-Introducing New Rats
rmca-INTRODUCING RATS TO NEW COMPANIONS

Rat Health Guide-viruses
iDWR 感染症の話-ペスト